記事:豪、日本の核武装を警戒 沖縄返還後、米公文書指摘

豪、日本の核武装を警戒 沖縄返還後、米公文書指摘
中国新聞』08/5/13

【ワシントン13日共同】沖縄の「核抜き・本土並み」返還に合意した一九六九年十一月の佐藤栄作首相とニクソン米大統領の共同声明を受け、オーストラリアで日本の核武装に対する警戒論が拡大、在キャンベラの米大使館が機密公電で日本復活への不信と恐怖が国民の間に広がっていると総括していたことが十三日、分かった。

 オーストラリアは太平洋戦争の際、米英など連合国の一員として日本と交戦。北部ダーウィンは日本軍の空襲を受けたほか、多くのオーストラリア兵捕虜が日本軍の捕虜収容所で死亡した。終戦から約四半世紀を経た当時も「日本脅威論」が根強かったことを示している。

 機密指定を解かれた六九年十二月五日付の公電は、法政大法学部の河野康子こうの・やすこ教授(日本政治外交史)が米国立公文書館で見つけた。

 それによると、キャンベラの米大使館は佐藤・ニクソン共同声明に対するオーストラリア国内の反応を収集。「日本が太平洋地域で力を回復することへの潜在的な不安が引き続き存在している」と分析した。

 公電は、日本軍潜水艦の攻撃を受けた東海岸で、日刊紙が「共同声明はオーストラリアを含む米同盟国に不安の種を与えるべきでない」と指摘したと紹介。米政府が当時、沖縄の「核抜き」返還に対する同盟国の評価を気にしていたことをうかがわせた。

 また「米国の『核の傘』は一時的で、新生日本がやがて頭をもたげるだろう」(オーストラリアン紙)、「(沖縄返還後の)日本はもはや『低姿勢』を保てない」(エイジ紙)などの有力紙の論評も打電した。

 共同声明に基づき、沖縄の施政権は七二年五月十五日、米国から日本に返還された。