関満博『現場主義の知的生産法』

関満博『現場主義の知的生産法』ちくま新書、2002年
現場主義の知的生産法 (ちくま新書)
 かつて司馬遼太郎は、新聞記者は、火星人の眼と地下の人の眼を持たねばならないと言った。マクロとミクロの眼の両方を持つべきとする司馬の歴史観の現れでもであるが、長年「地下の人」と向き合ってきたる関の仕事術はとても参考になった。
 一年の多くを国内外の現場にいて聞き取りに過ごし、彼らの仕事を纏めた研究成果を精力的に発表する。古風な言い方をすれば「常在戦場」だ。ネットで史料を集め、流行りの理論を用いて分析する学門とは一線を画すと評することが容易だが、これをとことんやれる人は意外にそういない。
 関の仕事術を読んでいると、関係者を訪ね歩き、世界中の公文書館で史料をかき集める現代史研究も「現場主義」でありどこか共通したものを感じた。IT技術が進んでも現場は消えるわけではない。歴史学者はネットの発達で自宅で多くの公文書をみれるようになったが、同時に情報を容易に手に入れれるようになって、世界中気軽に史料調査に行けるようになった。願わくば「常在現場」でありたい。