平和条約前に歯舞、色丹返還 92年、ロシア提案 東郷元局長が証言

ロシアが1992年に領土問題解決に向けて、平和条約締結後の歯舞、色丹の2島返還を約束した56年の日ソ共同宣言に基づき非公式提案をしたとのゲオルギー・クナーゼ元ロシア外務次官の証言について、東郷和彦・元外務省欧亜局長は8日、「証言に誤りがある」と明らかにした。平和条約締結前に歯舞、色丹2島を先行返還するとの内容で、証言よりも日本に有利な提案だったという。

 提案は92年3月、当時の渡辺美智雄外相とコズイレフ・ロシア外相との東京での会談後、行われた。クナーゼ氏を取材した北海道新聞が昨年12月24日報じた。同氏の証言によると、提案は、ロシア側が《1》歯舞、色丹2島を引き渡す手続きなどに合意《2》平和条約を締結《3》歯舞、色丹2島を日本へ引き渡す《4》その後、日ロ関係の推移を見て、ふさわしい雰囲気ができれば残る国後、択捉2島について協議する―との内容。

 一方、東郷氏によると《1》歯舞、色丹を引き渡す手続きなどに合意《2》協定を結んで歯舞、色丹2島を引き渡す《3》歯舞、色丹にならう形で残る国後、択捉の扱いを交渉《4》交渉がまとまれば平和条約締結する―との内容だった。<北海道新聞1月9日朝刊掲載>