記事:「核密約」政府見解変更の公算、外相は解明に意欲

核密約」政府見解変更の公算、外相は解明に意欲

外務省で日米安全保障条約改定時の核持ち込みを巡る「密約」の存在を裏付けるとみられる関連文書が見つかったことが21日、明らかになり、政府は「密約は存在しない」という従来の見解の変更を迫られる公算が大きくなった。

 岡田外相は、文書の持つ意味などを有識者を交えた調査委員会に検討させ、来年1月に調査結果を発表する考えだ。

 外務省は関連文書の内容を公表していないが、1960年の条約改定時の密約の一部とされる、日米の「討論記録」に関連する文書が見つかったとみられる。省内のファイルを調べていた、北野充官房審議官を長とする15人程度の調査チームが見つけ、20日に外相に報告した。討論記録は米側で公表されており、当時の藤山愛一郎外相とマッカーサー駐日大使が米艦船の寄港や米軍用機の飛来を同条約に基づく事前協議の対象としないと決めたことなどが記されている。

 外相は21日、三重県四日市市での講演で、「来年1月に白黒がはっきりする。政権交代とともに、『密約がない、ない』と言い続けてきた歴代政権の重荷を取り除く」と述べ、実態解明に強い意欲を見せた。その後、記者団には、関連文書を同省幹部に示した後、すべて回収したと説明した。

 9月に始まった省内調査では、〈1〉日米安保条約改定時の核持ち込み〈2〉朝鮮半島有事の際の戦闘作戦行動〈3〉沖縄返還時に交わされたとされる有事の際の核持ち込み〈4〉沖縄返還時の原状回復補償費の肩代わり――に関する密約を対象に、日米安保関係2694冊、沖縄返還関係571冊、在米大使館に存在する約400冊のファイルの分析を進めてきた。

 今回の関連文書は、このうち条約改定時の核持ち込みの密約の傍証となる可能性が高いという。この問題では、政府は事前協議が行われなかったことを理由に米艦船の核持ち込みを否定してきた。また、沖縄返還時の原状回復補償費などに関する密約の関連文書も存在するという見方が強まっている。

(2009年11月22日01時42分 読売新聞)



密約文書「ファイル5冊引き継いだ」…元条約局長

外務省の内部調査で日米安全保障条約改定時の核持ち込みを巡る「密約」の関連文書が見つかったことについて、東郷和彦・元同省条約局長は22日、テレビ朝日の番組で「密約に関連する文書を5冊のファイルにまとめた上で後任に引き継いだ」と証言した。

 東郷氏は文書の詳細については明らかにしなかったが、「国民に説明し、ねじれを解消すべきだ」と述べた。東郷氏はこれまで読売新聞の取材に対し、核密約に関する文書がファイル数冊分存在したことなどを証言していた。

 東郷氏は近く設置される有識者を交えた調査委員会や、国会での聞き取りに対しても「協力したい」と話している。

(2009年11月22日19時26分 読売新聞)