記事:沖縄密約開示訴訟:吉野文六氏出廷へ、12月に証人尋問

沖縄密約開示訴訟:吉野文六氏出廷へ、12月に証人尋問

 

【東京】沖縄返還に際し、米軍基地跡地の原状回復費用などの経費を日本側が負担するとした日米間の「密約」文書の開示を求め、県内外の学者やジャーナリストら25人が国を相手に提訴した沖縄密約情報開示訴訟の第2回口頭弁論が25日、東京地裁で開かれた。杉原則彦裁判長は当時、密約作成にかかわったとされる外務省の吉野文六アメリカ局長(当時)(91)の証人尋問を12月1日に行う方針を決めた。原告の一人であり密約に関する日本側資金の流れを研究する我部政明琉球大学教授の本人尋問も同日行う。第3回口頭弁論は10月27日に行われる。

 原告側は25日、吉野文六氏の陳述書を証拠として提出した。陳述書で吉野氏は(1)米軍基地跡地の原状回復費用を日本が負担する(2)ラジオ放送局ボイスオブアメリカ(VOA)移転費用を日本が負担する−とした密約文書それぞれに自身が署名したことを認めた。

 被告の国は、外務省内で沖縄返還交渉に関する行政文書ファイル308冊を特定したとした上で「(密約文書)そのもの自体またはそれに関連する文書、対象文書を取得、破棄または移管した記録のいずれの文書も発見し得なかった」と主張。米国立公文書館に密約文書が存在することについては「沖縄返還交渉過程の途中において米国側によって何らかの記録や備忘録的な文書として作成されたものと理解する」と主張し、米国側が一方的に作成したメモであると強調した。

 元公務員である吉野氏の証人出廷には、民事訴訟法第191条の規定により監督官庁である外務省の承認が必要。杉原裁判長は「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合を除き、(監督官庁は)承認を拒むことができない。外相の承認を得られるのではないかと期待している」と述べた。

 杉原裁判長は被告の主張に対し「一般論であり不十分」との認識を示し、「発見された308冊の中に含まれるべきものですでに廃棄されたものはあるのか」など質問し、次回までに回答するよう求めた。

琉球新報

2009年8月26日