記事:外交文書、公開の基準は?

質問なるほドリ:=回答・川上克己

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◆外交文書、公開の基準は?
 ◇原則「30年たった記録」 外務省など官僚の裁量

 なるほドリ 22日から外交文書が公開されるそうだけど、外交文書って、どんなものなの?

 記者 日本と他国の首脳の会談内容の記録や、海外訪問準備資料、在外大使館からの公電などです。外務省が保管しています。公開は76年に始まり、今回が21回目。これまでに500万ページ近い文書が公開されました。

 Q すべての外交文書を順番に公開してきたのかな。

 A そうではありません。公開する根拠は外務省の内規です。「作成から30年たった記録は原則、公開する」とうたっていますが、今回公開されるのも40〜50年代の記録が目につきます。法律に基づく公開ではないので、原則通りには行われていないのです。公開が遅れると、文書をもとに当時の関係者から話を聞いて歴史を検証する機会が失われることになります。

 Q 遅れること以外に問題はないの?

 A 国や個人の利益が害されると判断されれば、非公開にできるとも定めています。日米安保条約改定(60年)や沖縄返還(72年)など、国民の関心が高い記録は今も非公開。外交交渉に影響するというのが外務省の主張です。

 Q 公開、非公開を決めるのは誰なの?

 A まず外務省で文書を所管する担当課が判断し、官房長ら幹部19人とOB1人でつくる審査委員会が最終的に決めます。内容によっては他府省と調整しますが、いずれにしても公開するかどうかは官僚の裁量なのです。01年に情報公開法が施行され、外務省の開示を待たずに必要な文書の開示を請求できるようになりました。でも、この法律にも国や個人の利益が害されると府省が判断すれば、非開示にできる規定があります。

 Q 欧米は情報公開が進んでいるといわれているよね。

 A 米国や英仏独は法律で公開規定を定めています。米国には情報自由法や、秘密指定の国家安全保障情報に関する大統領命令があり、「国家機密」の指定は原則、25年で自動的に解除されます。日本と違い、非公開文書の存否も明らかにされます。国民の「知る権利」は民主主義の基本です。日本も、情報公開の幅を広げる法整備に取り組むことが求められます。(政治部)

毎日新聞 2008年12月22日 東京朝刊