橘玲『マネーロンダリング入門』

橘玲マネーロンダリング入門――国際金融詐欺からテロ資金まで』幻冬舎新書、2006年
マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)
巨額詐欺事件の解説に始まり、アルカイダの資金獲得手法など、時代につれて変遷する資金洗浄の手法を纏めた本。資金の流れは国際国内を問わず政治を見る上で最も重要な要素の一つだが、これほどわかりにくいものはない。911テロの後、SWIFTが送金情報データを米国当局に初めて提供したことによって、テロリストの資金の流れが明確になり、マカオ銀行の在米コルレス口座の閉鎖に踏み切った。北朝鮮は最近強硬姿勢を緩和してきているが、こうした国際マネーの出入口を塞ぐ措置が、北朝鮮に相当なブローを与えていることが推測できて面白い。日本の戦後を見ても、CIAの自民党への資金環流、戦後賠償汚職、韓国台湾からの親韓親台派議員への資金供与、在日朝鮮人の総連を通じた北朝鮮送金、そして中ソからの日本共産党ないし社会党への資金支援、国際資金の流れは政治の展開に密接に関わっていた。公式文書に出ないこうした事実をどのように歴史研究者は汲み取るべきなのか。いつも考えさせられる。