読売新聞戦後史班編『「再軍備」の軌跡』

読売新聞戦後史班編『昭和戦後史「再軍備」の軌跡』読売新聞社、1981年。


 読売新聞に連載された記事を再構成した本書は、多くの新資料や当事者の証言をもとに日本再軍備の軌跡を詳細に追った本格的な研究である。本書を一読して、まず、驚かされるのは当時存命であった多くの関係者に対する聞き取り調査の成果が全編にわたり余すところ無く用いられている点である。新聞記者ならではの詳細な聞き取りは、オーラルヒストリーを用いていかに「歴史」を組み立てかについてとても参考になる。
 第二に、本取材班は、戦後防衛体制を明らかにする上で欠かすことのできない多くの一次史料を発掘している。取材当時、三十年ルールで公開されたばかり米国側文書をはじめ、日本側証言者から提供されたいくつかの良質な資料を惜しげもなく本書に投じている。本書の取材班にアドバイスを与えた故堂場肇読売新聞編集委員が残した文書が、1990年代以降、日本の防衛政策に関する歴史研究を行う上で基本史料となったことからも、同取材班が発掘した史料の質の高さがうかがえる。