本田善彦『日・中・台 視えざる絆』

本田善彦『日・中・台 視えざる絆――中国首脳通訳が見た外交秘録』日本経済新聞社、2006年
日・中・台 視えざる絆―中国首脳通訳のみた外交秘録
 北京、台北双方の首脳通訳を担った台湾出身者に焦点をあて、彼らへのインタビューから主に構成された書籍。人民政府の対日外交を担った人物の多くが台湾出身であった点、さらに日中国交回復後、彼らの多くが対台湾外交にシフトしていった点などはとても興味深い。
 中華民国の苛烈な支配に対抗する点で、大陸の共産主義国家に活路を見出した者も、台湾独立運動に希望の光を見出した者は、思想は異なれど、本質的に相通ずるものがあったという指摘には首肯できる。研究史上未だ空白の多い北京の対日政策の一端を明らかにすると同時に、「個人」という視点から、中国台湾を織り成す国際政治の一側面を見事に描き出した秀作であろう。
 それにしても面白いのは、1966年の断絶までの日本共産党中国共産党との関わりである。本書のインタビューにおいても、この点に関して首脳通訳はノーコメントを貫いている。人脈の面、さらに資金面においても1950年代の両党の関わりは未だ謎が多く残されており、今後の史料公開とさらなる研究が期待される。